防災の備蓄を始めようとして、まず引っかかるのが「結局どれだけ用意すればいいのか」という量の問題です。リストを見ても品目は分かるのに、自分の家に何本・何食そろえればいいのかまでは書かれていないことが多いものです。
量が決まらない理由は、目安が「1人あたり」で示されているのに、そこへ家族の人数と日数を掛ける一手間が抜けているからです。逆に言えば、1人1日の基準量さえ押さえれば、あとは掛け算で自分の家の必要量を出せます。
この記事では、目安量を出す計算の考え方から、水・主食・おかず・トイレ・日用品それぞれの1人あたりの量、そして1人・2人・4人という家族構成別の計算例、量を決めるときの注意点までをまとめました。自分の家の備蓄量を自分で計算する手がかりとしてお使いください。
備蓄品の目安量を出す計算の考え方
品目ごとの数字を覚える前に、量を出す共通の考え方を押さえておくと迷いません。ここでは、目安量を計算する基本の式と、備える日数の決め方、家族構成による変化の3点を先に見ていきます。
目安量は1人1日の基準量に人数と日数を掛けて計算する
備蓄量は「1人1日あたりの基準量 × 人数 × 日数」という掛け算で出せます。品目ごとに1人1日の基準量はだいたい決まっているので、そこへ自分の家族の人数と、備えたい日数を掛けるだけで必要量が出ます。難しい知識は要らず、電卓かスマホがあれば十分です。
大事なのは、いきなり家族全員分をイメージしないことです。まず1人分の1日量を押さえ、次に人数を掛け、最後に日数を掛ける、と順番に広げると数字がぶれません。この式を1つ持っておけば、家族が増えても、備える日数を延ばしても、そのつど自分で必要量を計算し直せます。リストの品目を丸暗記するより、基準量と掛け算のやり方を覚えておくほうが応用がききます。まずは1人1日の基準量から確かめてみてください。
備える日数は3日分から1週間分で考える
掛け算のうち日数をいくつにするかで、そろえる量は大きく変わります。目安の下限は3日分、できれば1週間分です。災害の直後は救助や物流がすぐには動かないため、その空白を自分の備えでしのぐという考え方が土台になります。
まずは3日分を切らさないことを最初の目標にし、慣れてきたら1週間分へ広げていくと無理がありません。3日と1週間では必要量が2倍以上に増えるので、どちらを土台にするかで買い足す量も変わってきます。自宅が無事で在宅避難になる場合は、支援が届くまでの時間が読みにくいので、日数は長めにとると安心できます。日数を決めないと量は出せないので、計算の前に「うちは何日分そろえるか」を先に決めておきましょう。

1人あたりの必要量は家族構成で変わる
同じ「1人分」でも、その人が乳幼児か、高齢者か、妊婦かで中身は変わります。赤ちゃんがいればミルクや多めの水、高齢者がいれば常備薬や食べやすいレトルトが上乗せになり、単純な人数×基準量だけでは足りない場面が出てきます。
基本の計算式そのものは家族構成が変わっても共通です。変わるのは、対象者ごとに何を足すかという内訳の部分だけだと考えると整理しやすくなります。たとえば大人4人と、大人2人+乳児2人では、同じ4人でも水やおかずの中身は違ってくるものです。ここではまず標準的な大人を基準に量を出し、乳幼児や高齢者がいる家庭は別途プラスする、という二段構えで見ていきます。対象者ごとの細かな備えは世帯別の記事で確かめてみてください。

品目別の1人あたり目安量
計算の土台になるのが、品目ごとの1人1日の基準量です。ここでは水・主食・おかず・簡易トイレ・日用品について、1人あたりの目安と数え方を順に見ていきます。下の表を人数と日数で掛ければ、そのまま必要量になります。
| 品目 | 1人1日の目安 | 3日分 | 1週間分 |
|---|---|---|---|
| 水 | 3L | 9L | 21L |
| 主食 | 3食 | 9食 | 21食 |
| おかず・缶詰など | 1〜2品 | 3〜6品 | 7〜14品 |
| 簡易トイレ | 5回分 | 15回分 | 35回分 |
水は1人1日3リットルを目安にする
飲料と調理を合わせて、水は1人1日3リットルが目安です。3日分なら1人9リットル、1週間分なら約21リットルになります。2リットルのペットボトル6本入り1箱が12リットルなので、箱を単位にして数えると買い足しの計算が楽になります。
水は品目のなかでも量がかさみ、切らすと最も困る品です。飲用だけでなく、米を炊いたりレトルトを温めたりする調理にも使うので、思ったより早く減ります。長期保存水は5年ほど持つぶん割高なので、まずは普段使いの水を多めに買い置きして回すほうが続けやすく、家計にもやさしい選び方です。夏場や在宅避難を想定するなら、目安より少し多めに持っておくとより安心できます。まずは3日分の9リットルを切らさないところから始めてみてください。

主食は1人1日3食分を用意する
エネルギーの中心になる主食は、1人1日3食で数えます。3日分なら9食、1週間分なら21食です。米・パン・麺を組み合わせておくと、飽きずに続けられるうえ、調理できる状況に合わせて使い分けられます。
パックご飯や乾麺は火や水が使える場面で、水だけで戻せるアルファ米は火が使えない場面で頼りになる存在です。1種類に偏らせず数種類を回しておくと、停電や断水で使える調理手段が限られても対応しやすくなります。同じ主食ばかりが続くと食が進まなくなるので、味の違うものを混ぜておくと避難生活のストレスも減らせるでしょう。1食を何でまかなうかを決めてから食数を掛けると、必要量が具体的に見えてきます。家庭の調理環境に合わせて、主食の内訳を組んでみましょう。
おかずと栄養補助食品で不足を補う
主食と水だけでは、たんぱく質やビタミンが不足しがちです。そこで魚や肉、豆の缶詰、レトルト惣菜でおかずを足します。目安は1人1日1〜2品で、3日分なら3〜6品ほど。とくに停電で調理ができないときは、温めずそのまま食べられる缶詰やパウチ食品が中心になります。
ようかんや栄養補助食品を加えておくと、食欲が落ちた場面でも手軽にエネルギーを補えるのが利点です。缶詰やレトルトは種類も豊富なので、和洋や味付けを変えて数品そろえておくと飽きずに食べ続けられます。おかず系も普段の食卓で使って回せるものを選べば、備蓄と日常がつながり、期限切れも防げます。主食・水・おかず・栄養補助の4本柱で組むと栄養が偏りにくいので、この4つをそろえる前提で品数を決めてみてください。
簡易トイレは1人1日5回分を見込む
見落としやすいのが簡易トイレです。排泄の回数は1人1日5回が目安で、3日分なら15回分、1週間分なら35回分になります。断水すると水洗トイレが真っ先に使えなくなるため、食料と同じ日数分をそろえておく必要があります。
家族分は人数を掛けるだけです。4人家族の3日分なら5回×3日×4人で60回分と、意外にまとまった数になります。回数分の凝固剤と処理袋がセットになった製品を、必要回数から逆算して用意しておきましょう。まとめ買いのパックは50回分などの単位で売られていることが多いので、家族の必要回数に近いものを選ぶと無駄が出ません。食料ほど意識されない品ですが、実際の避難生活では困りやすい部分なので、早めに人数分を数えておくと安心できます。
日用品は使う頻度から必要数を出す
食料以外の日用品は、食数のように一律の基準がないぶん、使う頻度から数えます。ウェットティッシュ、ポリ袋、ラップ、常備薬、乾電池、モバイルバッテリーなどが代表です。「1日に何回使うか × 日数」で見積もると、量の当たりをつけやすくなります。
選ぶときに優先したいのは、水を使わずに衛生を保てる物です。ラップは食器に敷けば洗い物を減らせ、ウェットティッシュは手や体をふくのに使えます。とくに断水中は手洗いや入浴が難しくなるため、体をふくシートや歯みがきシートは多めに見込んでおくと安心です。常備薬や持病の薬は、代わりがきかないので少し多めに用意しておきましょう。品目ごとに1日の使用量を思い浮かべ、そこへ日数を掛けて必要数を出してみてください。

家族構成別の目安量の計算例
同じ計算式でも、人数が変わると出てくる量はまるで違います。ここでは1人・2人・4人の3パターンで、水・主食・簡易トイレを3日分そろえた場合の必要量を、実際に計算して見ていきます。
| 家族構成 | 水(3日) | 主食(3日) | 簡易トイレ(3日) |
|---|---|---|---|
| 1人 | 9L | 9食 | 15回分 |
| 2人 | 18L | 18食 | 30回分 |
| 4人 | 36L | 36食 | 60回分 |
1人暮らしは3日分をコンパクトにそろえる
1人暮らしの3日分は、水9リットル・主食9食・簡易トイレ15回分が基準になります。収納に余裕がないことが多いので、まずは無理のない3日分から始めるのが現実的です。水は2リットルボトル6本入り1箱が12リットルなので、1箱でほぼ3日分をまかなえます。
量が少ないぶん管理もしやすく、普段の食事で回しながら補充する仕組みを作りやすいのが1人暮らしの利点です。まとめ買いで置き場所に困るより、少量を切らさず回すほうが向いています。ワンルームなら、ベッド下や玄関のすき間を使えば3日分は十分に収まります。3日分を確保できたら、次は1週間分の水と主食へ少しずつ広げていきましょう。対象別の詳しい備え方は世帯別の記事も参考になります。

2人暮らしは基準量を2倍にして計算する
2人暮らしは、1人分の基準量をそのまま2倍にすれば必要量が出ます。3日分なら水18リットル・主食18食・簡易トイレ30回分です。水は12リットル入りを2箱、主食は1人1日3食×2人×3日で18食、と数えやすい単位に置き換えると買い物のときに迷いません。
2人分は同じ食品を分け合えるので、在庫の管理は比較的シンプルです。缶詰やレトルトを共有できるぶん、種類を絞りつつ数をそろえやすくなります。1人暮らしより量は増えますが、2箱・18食といった具体的な数に落とせるので、買い物リストは作りやすくなります。ただし2人とも大人であることが前提の量なので、どちらかの食べる量が多い場合は主食を少し上乗せしておくと安心です。まずは2倍の量を棚に確保するところから始めてみてください。
4人家族は1週間分で量が大きくなる
4人家族になると、3日分でも水36リットル・主食36食・簡易トイレ60回分と、量が一気に増えます。1週間分にすれば水は84リットルにもなり、2リットルボトルで42本と、置き場所そのものが課題になってきます。
これだけの量を1か所にまとめると、その部屋が被災したとき一度に失いかねません。キッチン・クローゼット・車などに分けて置く分散収納にしておくと、取り出しやすさも安全性も上がります。水の84リットルを一度に買うと運ぶのも大変なので、月ごとに数箱ずつ買い足していく形も現実的です。子どもの年齢によって食べる量が変わる点も見込み、成長に合わせて食数を調整しましょう。量が多い家庭ほど、一度に買わず回しながらそろえる進め方が向いています。
目安量を計算するときの注意点
計算で量が出せても、そのまま鵜呑みにすると足りなかったり持て余したりします。最後に、量を決めるときに気をつけたい2点を押さえておきます。
在宅避難を想定して日数は長めにとる
自宅が倒壊を免れた場合は、避難所ではなく自宅にとどまる在宅避難が基本になります。この場合、電気・ガス・水道が止まったまま自宅で過ごすことになり、支援が行き渡るまで3日より長くかかる例も少なくありません。大きな災害では、ライフラインの復旧に1週間以上かかった過去の例もあります。
そのため、計算の土台にする日数は下限の3日分で止めず、できるだけ1週間分へ寄せておくと安心です。とくに水と簡易トイレは、断水が続くと代わりがきかず、不足すると生活が一気に苦しくなります。避難所へ移る場合でも、最初の数日分は自宅から持ち出せるようにしておくと動きやすくなります。この2品だけは目安より多めに見込み、ほかの品より優先してそろえておきましょう。
ローリングストックで回して量を一定に保つ
必要量が大きく出ると、不安から一度に大量買いしたくなります。ですが買い込みすぎると、使い切れずに期限が切れたり、収納を圧迫して普段の生活を邪魔したりしがちです。備蓄はあくまで日常で回せる範囲が適量だと考えておきましょう。
そこで役立つのがローリングストックです。普段の食品を少し多めに買い、古いものから使い、減った分を買い足す。この回転を続ければ、目安量を下限ラインとして切らさずに保てます。特別な非常食を眠らせるより、日常の食事に組み込んでしまうほうが、期限切れで捨てる無駄も減らせるでしょう。計算で出した量を「常にこれだけは家にある状態」の基準にして、そこを下回らないよう補充していくと、無理なく続けられます。
まとめ
備蓄品の目安量は、「1人1日の基準量 × 人数 × 日数」の掛け算で自分の家の分を出せます。1人1日あたりの基準は、水3リットル・主食3食・簡易トイレ5回分です。ここへ人数と日数を掛ければ、家族分の必要量が決まります。家族構成別に見ると、1人3日で水9リットル、4人3日で水36リットルと量は大きく変わり、多いほど分散収納やローリングストックが要になります。まずは全員分の3日分から計算し、水と簡易トイレを優先しながら1週間分へ広げてみてください。自分の家の数字を一度出しておけば、以降の買い足しに迷わなくなります。


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