災害への備えというと食料に目が向きがちですが、見落とされやすいのが水です。何リットル用意すればいいかまで計算している家庭は多くありません。けれど人は水がなければ数日ともたず、断水すればトイレも手洗いも止まってしまいます。
目安としてよく聞くのが「1人1日3リットル」という数字です。ただ、それが何人分で何日分なのか、飲む水と生活に使う水は同じ枠なのかまで踏み込むと、とたんにあいまいになるものです。
水の備蓄量は、人数と日数さえ決めれば掛け算で出せます。1人1日3リットルの根拠から、家族構成別の早見表、飲料水と生活用水の分け方、無理なくためる工夫までを順にまとめました。まずは自分の家の必要量を数字にするところから始めてみてください。
防災で備える水の量の目安
水の備蓄と聞いても、まず何リットルを目標にすればいいのかが分からないと動き出せません。ここでは、1日に必要な量と備える日数という2つの基準から、目安の考え方を押さえていきます。
水の備蓄量は1人1日3リットルが基準
災害に備える水の量は、1人あたり1日3リットルが基準とされています。内閣府や自治体が家庭備蓄の目安として示している数字で、飲むための水と調理に使う水を合わせた「飲料水」の量です。まずはこの3リットルを、家族の人数分そろえるところから考え始めます。
なぜ3リットルなのかというと、人が生命を保つために最低限必要な水分が、おおよそこの量だからです。汗をかく夏場や体調によっては、さらに多くの水が要ります。少なく感じるかもしれませんが、これはあくまで最低ラインの数字です。ここを下限に置き、余裕があれば増やしていく方針で考えると分かりやすくなります。ミネラルウォーターでも水道水を容器にためたものでもかまいませんが、水道水は3日ほどで入れ替える点だけ覚えておきましょう。
3リットルの中身は飲む水と調理に使う水
1日3リットルという量は、すべてをそのまま飲むわけではありません。内訳はおおまかに、純粋に飲む水が1リットルほど、残りの2リットルが米を炊いたりスープを作ったりする調理用の水です。3リットルは「口に入る水」の合計だと考えると分かりやすくなります。
ここで押さえておきたいのが、トイレや手洗い、洗濯に使う水はこの3リットルに含まれないという点です。それらは生活用水として、別に見積もる必要があります。飲料水の3リットルと生活用水を混同すると、いざというときに片方が足りなくなりかねません。まずは飲む・作るための3リットルを確保し、生活用水は別枠で考えるのが基本の分け方です。この記事でも、後半で飲料水と生活用水を分けて備える方法をあらためて取り上げます。
備える日数は最低3日分から1週間分
必要な水の量は、1日分だけでなく「何日分ためるか」で決まります。備える日数の目安は、最低で3日分、できれば1週間分です。大きな災害では、支援物資が届くまでに3日ほどかかるとされ、その間を自宅の備えでしのぐ必要があるためです。
近年は1週間分の備蓄がすすめられる場面も増えてきました。大規模な地震などでライフラインの復旧に時間がかかるケースを想定してのことです。とはいえ最初から1週間分をそろえるのは負担が大きいので、まずは3日分を切らさない状態を作り、そこから1週間分へ広げていくとよいでしょう。マンションの高層階など、断水すると給水を運び上げるのが大変な住まいでは、初めから多めの日数を見ておくと安心です。日数さえ決めれば、次は人数を掛けるだけで総量が出せます。
人数と日数から出す水の必要量
必要量は「1人1日3リットル」に人数と日数を掛ければ求められます。ここでは計算のしかたと、家族構成ごとの早見表、買うときのボトル換算までを具体的に見ていきます。
必要量は3リットルに人数と日数を掛けて求める
水の必要量を出す式は、とてもシンプルです。「1人1日3リットル × 人数 × 日数」で、家全体で用意すべき総量が求められます。たとえば3人家族が3日分を備えるなら、3リットル×3人×3日で27リットルです。
この掛け算さえ覚えておけば、家族が増えても日数を延ばしても、必要量をすぐに出し直せます。まずは自分の家の人数と、目標にする日数を当てはめてみてください。数字にすると「意外と多い」と感じるかもしれませんが、これは飲料水だけの量です。生活用水はこれとは別に見積もる前提で、計算を進めていきます。ペットや来客が多い家庭では、その分も人数に足しておくと安心です。まずは3日分でひとまず総量を出し、家族で「これだけ要るのか」と共有しておくと、備える動機になります。
家族構成別の必要量は早見表で確認する
毎回計算しなくても、家族の人数と日数が交わるところを見れば必要量がつかめます。下の早見表に、1人から4人までの1日分・3日分・1週間分の飲料水の量をまとめました。すべて1人1日3リットルで計算しているので、自分の家に近い行を目安にしてください。5人以上の場合は、1人分の3リットルを人数分だけ足していけば同じように出せます。
| 世帯人数 | 1日分 | 3日分 | 1週間分 |
|---|---|---|---|
| 1人 | 3L | 9L | 21L |
| 2人 | 6L | 18L | 42L |
| 3人 | 9L | 27L | 63L |
| 4人 | 12L | 36L | 84L |
4人家族の1週間分では84リットルと、かなりの量になります。2リットルボトルにすると42本ぶんなので、一度に全部そろえようとせず、まずは3日分を確保し、少しずつ1週間分へ積み増していくのが現実的です。水だけでなく食料や日用品も合わせて備える必要があるので、全体像は備蓄リストで確認しておきましょう。

3日分と1週間分では必要量が2倍以上変わる
同じ人数でも、備える日数を変えると必要量は大きく動きます。3日分と1週間分を比べると、7日は3日のおよそ2.3倍なので、量も2倍以上に増えます。3人家族なら3日分27リットルに対し、1週間分は63リットルです。
この差を知らずに「とりあえず1週間分」と決めると、収納しきれずに挫折しやすくなります。逆に3日分で止めておけば、置き場所の負担はぐっと軽くなるものです。自分の家の収納量と相談しながら、まずは3日分、慣れたら1週間分へと段階的に増やす進め方が続けやすいでしょう。日数の設定が、そのまま置き場所の広さを決めると考えてください。収納に余裕がなければ、押し入れやベッド下、玄関の隅などに分けて置くと、無理なく日数を伸ばせます。
2リットルペットボトルの箱数に置き換える
必要量をリットルで出したら、次は買い物しやすいように本数や箱数へ置き換えます。市販の水は2リットルペットボトル6本入りが1箱で、12リットルです。この「1箱12リットル」を基準にすると、何箱買えばいいかがすぐ分かります。
たとえば3人家族の3日分27リットルなら、12リットルの箱が2〜3箱でまかなえます。4人家族の1週間分84リットルなら7箱です。箱単位で考えると、買い足しの計画も立てやすくなるでしょう。ネット通販で箱買いしておけば、重い水を運ぶ手間も省けます。1リットルや500ミリリットルのボトルも混ぜておくと、避難時に持ち出しやすく、飲みかけを無駄にしにくい利点があります。必要な箱数を割り出して、少しずつストックを積み上げていきましょう。
飲料水と生活用水の分けた備え
3リットルの飲料水だけでは、実際の生活は回りません。トイレや手洗いに使う生活用水は、別に必要になります。ここでは、飲むための水と暮らしのための水を分けて備える考え方を見ていきます。
飲料水は1人1日3リットルを切らさない
飲料水は、命に直結するため最優先で確保します。1人1日3リットルを人数分、決めた日数だけ用意し、この量を常に切らさないようにします。飲む水と調理の水は代わりがきかないので、生活用水よりも先に、確実にためておかなくてはなりません。
飲料水は長期保存水でも、ふだん飲んでいるペットボトル水でもかまいません。大切なのは、目標量を下回ったらすぐ買い足すことです。減ってから慌てないよう、残りが半分になったら補充する、といった自分なりのラインを決めておきましょう。開封したボトルは早めに飲み切り、未開封のものは賞味期限を月に一度確かめておくと、いざというとき安心して口にできます。まずは飲料水の3リットルを家族分そろえることを、備えの土台にしてください。
生活用水はトイレや手洗いで別に必要になる
生活用水は、トイレを流したり手を洗ったりするための水で、飲料水とは別枠で必要になります。この生活用水のほうがむしろ量は多く、トイレ1回で数リットル、手洗いや歯みがきを合わせると1人1日10リットル以上使うとも言われます。
ただし、これを飲めるきれいな水ですべてまかなうのは現実的ではありません。生活用水は必ずしも飲料の水質でなくてよいので、風呂の残し湯などでためた水を回して使います。飲料水は3リットルきっちり、生活用水は別に多めに質は問わず、という二本立てで考えると、必要量の見積もりがぶれなくなるでしょう。生活用水まで飲料と同じペットボトルでそろえようとすると、量が膨大になって続きません。飲む水と暮らしの水を切り分けることが、無理のない備蓄量を保つ第一歩になります。
生活用水は風呂の残し湯や雨水で補う
大量に要る生活用水は、飲めない水でよいぶん、身近な方法でためられます。もっとも手軽なのが、入浴後の残し湯をすぐに捨てず、浴槽にためておく方法です。浴槽1杯でおよそ180〜200リットルあり、断水時にトイレを流す水として頼りになります。
雨水をポリタンクにためておくのも有効な手です。ベランダやバケツで受けた水を、トイレや掃除に回せます。ただし残し湯は、小さな子どもがいる家庭では転落の危険があるため、ふたをする、扉を閉めるなどの対策を忘れないでください。ためた水はあくまで生活用水なので、口に入れないよう「飲用不可」と書いた紙を貼っておくと家族の間違いを防げます。飲む水と分けてこうした水を確保しておくと、断水時の安心感が大きく変わります。
水の備蓄量を無理なく保つ工夫
必要量が分かっても、大量の水をいきなりそろえるのは大変です。ここでは、日々の暮らしのなかで無理なく備蓄量を保つ工夫と、量を増やしたいときの目安をまとめます。
普段使いの水を多めに回して備蓄量を保つ
水の備蓄は、特別な保存水を買い込まなくても、普段飲んでいるペットボトル水を多めに置いておくだけで始められます。古いものから使い、減った分を買い足すローリングストックで回せば、常に一定量の新しい水が家にある状態を保てます。
この方法なら、賞味期限が切れて水を捨てる無駄も出にくいのが利点です。2リットルの箱を1〜2箱多めに常備し、料理や飲用で使ったら次の買い物で補充する、というリズムを作ればいいだけです。保存水のように何年も置きっぱなしにしないので、管理も気楽でしょう。棚の奥に新しい箱、手前に古い箱を置き、手前から使うようにすると、自然に古いものから減っていきます。まずは普段使いの水を1箱多めに買うところから、無理なく積み上げていきましょう。

夏場や在宅避難では目安より多めに用意する
3リットルはあくまで最低ラインなので、状況によっては多めに見ておくと安心です。汗をかく夏場は水分の消費が増えますし、自宅にとどまる在宅避難を選ぶなら、生活用水も含めて長めの日数を想定しておく必要があります。
小さな子どもや高齢者、ミルクが要る赤ちゃんがいる家庭も、多めの確保がすすめられます。とくに粉ミルクはお湯に溶くための清潔な水が欠かせないので、赤ちゃんがいるなら飲料水を厚めに見ておきましょう。目安どおりの量で止めず、家族の状況に合わせて1.2〜1.5倍ほど上乗せしておくと、いざというとき慌てずに済みます。長期保存水を選ぶか普段使いの水を回すかといった選び方は、保管の手間や家計とも相談して決めてください。

まとめ
防災の水の備蓄量は、1人1日3リットルを基準に、人数と日数を掛けて求めます。3リットルは飲む水と調理の水を合わせた飲料水の量で、トイレや手洗いに使う生活用水は別枠です。備える日数は最低3日分、できれば1週間分を目標にし、家族構成別の早見表や2リットルボトルの箱数に置き換えると計画が立てやすくなります。飲料水は切らさないよう確実に確保し、大量に要る生活用水は風呂の残し湯や雨水で補いましょう。普段使いの水を多めに回すローリングストックなら、無理なく備蓄量を保てます。まずは自分の家の人数と日数を式に当てはめ、必要量を数字にするところから始めてみてください。


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